第五章 都市シミュレーション学の体系化


<3分で分かるマスタープラン>

 これまでSimCityの可能性について追求してきたわけだが、SimCityのような都市シミュレーションを動かすことによって得られるイメージを現実の世界に還元することを目指すという都市シミュレーション学の一体系を模索する必要があるだろう。学問の成立というのは決して一朝一夕で出来るものではないが、我々が課せられた「まちづくり」の将来構想を考えるに上で避けられない問題に立ち向かうという意味でも、あるべき学問の体系を目指し続けねばならないのである。ここではこれまでの章の流れを受けて、わずかながらに見えてきたSimCityを用いた都市シミュレーション学を、講義形式を用いて確立する。実際に学問の完成には至らないかもしれないが、研究会WebサイトにてWeb形式で講義を行いながらその可能性について追求したいと思う。

 ここでは一モデルとして「3分で分かるマスタープラン」を目標としながら活動をすることにより、都市の全体像の把握と都市に関わるその理論を還元するという基本的な作業を行う。この活動内容はこれから市政に関わる事になる公務員志望者だけではなく、自らの地域で行われるであろうまちづくり運動に積極的に参加することを促すことを目標とする。このマスタープランを用いる学習は、マスタープランを通じて将来構想を描きそれを実現する作業と理論をシミュレーションを通じて学ぶことを目的としている。これはシミュレーションを用いることでしかできない形である。


活動目標
 都市計画法が改正されてからにわかに浸透してきた市民型まちづくりの大きな橋渡しとなる都市計画マスタープランのSimCityでの作業を通じて、実際のマスタープランを作成するプロセスや都市の理論を学び、SimCityを用いてその還元作業を行う。このプロセスにおいて普段見えない都市を知り、学習することで単なる実験としてのシミュレーションだけではなく、将来の予測をしながらまちづくりを行う能力を育成する。また、理論に裏打ちされたわかりやすく、説得力のあるマスタープランを作り出すという作業により、これからのまちづくりを担うことになるであろう学生達に必要とされる計画力、活動力、企画力を高めることを促す。実際の活動内容については後述するが、その元になる講義の流れは添付資料2の仮シラバスを参照して頂きたい。

 本学部で実施する場合を想定し、コンピュータ技能の基礎を身につけた2年生を対象とし、PC教室の大型ディスプレイやLAN環境を効果的に利用する形で構成した。それは、ビデオの上映や受動的なプレゼンテーションに留まらず、実際のSimCityの変化状況を教師、もしくは生徒の例を使いながら説明することが可能になるからである。また、BBSを利用した学生同士の意見交換等により、インターネットを利用した自己学習を促し、IT時代にふさわしいまちづくりの手法を見いだすこともあるだろう。また、SimCityのプレイ方法について詳しく説明せずに、都市シミュレーション学研究会Webサイトなどを見てその手順を学ぶようにさせる。この場合Webサイトの専門に踏み込んだコンテンツに触れることで、自己学習していくこともあるだろうし、より高度な都市の理論についてインターネットを通じて知ることもあるだろう。そのため研究会Webサイトには従来のように実際の都市計画の研究をするコンテンツとともに、学生の都市データとマスタープランを集めて掲示しておくコンテンツと、様々な疑問やテクニックを話し合うBBSを設けておく(これらの使い方については後述する)。

 こうしてSimCityをプレイすることで学習を意識化させていくプロセスをそこで踏ませていくのである。また、この中で様々な部門の学問について触れることがあるが、あくまでも概論的な説明を種に行わせる。そうすることによって、2年次の選択必修の専門科目の知識を取り込こんだり、3年次からの専門分野への進路決定にも意識化を図ることが出来る。このようにこの講義を通して、「都市の創造」を都市情報学部の全ての科目とリンクして考えるようになるだろう。


活動内容
 都市シミュレーション学の仮シラバスを元に実際にどのように講義形式で用いるかという流れについて説明する。この講義は前期13回、後期13回と想定して構成されている。評価の方法は、適宜レポートを提出させることによる加点と、夏期・冬期休暇終了時に、マスタープランを元にした都市開発のレポートを考慮する。その都市開発のレポートはあくまでも都市完成ではなく、詳細な都市レポートを目的としているため、失敗した理由や成功した理由、発展のプロセスとそれによる都市の表情変化など、プロセスを重視したレポートの評価を行う。基本的に学生達は講義を出なくても良いのだが、その為に何の理論もない無計画な都市計画の反省を書くだけのレポートもあるかもしれないが、正しい都市評価を自分で下せないという学生には当然単位をあげることは出来ない。


前期
1) イントロダクション
 歴史的な都市の変遷を交えながらこれまでの都市計画から新しい都市・地域づくり「まちづくり」について述べる。それをうけてSimCityを用いていったい何を行い、何を目指すのかを説明する。

2) SimCityをプレイする
 まず、SimCityに慣れさせることを目的とし、その中で感じた都市のイメージとともに、SimCityに対しての疑問点・課題点について課題として書かせる。また、この課題はメールにて送信させる。この課題から得た情報により以降の講義の形式を多少手直しするべきであろう。

3) 現実の都市と仮想都市
 ここでは都市についてのイメージと現実を踏まえながら「都市」そのもののイメージをそれぞれに植え付けさせる。その場合は学生に最もイメージの湧きやすい名古屋市と可児市をSimCityで作成されたものと現実のイメージを比較させるのがよいだろう。この作業において前回学生達が体験してきたゲームSimCityを真面目に捉えるようになるだろう。そして、シミュレーションの限界と可能性について学生が感じたことをBBSで討論させることを課題とする。また、ここでSimCityがアメリカの都市計画思想から来ていることも説明する必要がある。

4) マスタープラン作成
 都市のイメージという物をSimCityで再現し、都市を作るために、都市計画マスタープランを実際のマスタープランの説明しながら作らせる。あまりにSimCityのもつ楽しさを忘れないためにも、都市の形成過程から学ぶためにも自分の好きな地形を利用して都市を作らせていく。この場合、川と海のある地形を選択する学生もいれば、緑の多い山岳地を選択する人もいれば、多くの人口を抱えることが出来そうな平原を選択する学生もいるだろう。これは個人個人の持つ理想とする都市のイメージが具体化する最初の段階であるため、地形を自由に選択させる。場合によってはアメリカの実際のUSGS地形データをSIMCITY 3000に読み込むことが出来るため、それを利用させるのでも良いかもしれない。
 そうしてその選択された地形を画像として保存し、ペイントソフトを使って簡単な地区割り開発プランを図示。それをHTML文書に都市の目標とともに添付しておき、ゲームデータとなる都市ファイルとともにLANを通じて提出する。こうして学生が作った簡単なマスタープランを専用のサーバにアップロードしておき、いつでも全ての学生がそれを参照・印刷できるようにしておく。今後、前期はこのマスタープランを元に都市を作っていく。
また、次回までの宿題として、都市ファイルをダウンロードして学生達が自由に都市を作ってメディアに保存するようにしても良い。この時学生は何度も繰り返してできるだけマスタープランに沿う都市を作ろうとするだろうが、その実現には非常に苦労するだろう。このプロセスにおいてなぜうまくいかないのか、どうすればうまくいくのだろうかという都市の理論についての意識が高まるのである。時期的にもゴールデンウィークと重なるためこのまま都市をゲーム時間で何年か進めさせて提出、という形でも良い。

5) 都市を育てる
 前回作った地形を元に都市をマスタープランに沿うように作らせるのだが、今回までにそれなりの都市を作って持ってくる人は少ないだろう。実際新しい都市をいきなり開発計画通りにすることはほぼ不可能であることに気づくであろう。この時学生はSimCityの扱い方に慣れていき、そしていかに実現可能なプランを行うべきかを実感させるとともに、理論の必要性を知ることになるでしょう。理想が高ければ高いほどその実現は難しい。しかし、そこであきらめるのではなくどうすれば理想に近づくことが出来るのかを考えさせるようにするためにまず、都市全体の経営(運営)のあり方を講義する。そして、SimCityでは実際どのようにするべきなのか、というのをテクニカルな面を若干含ませて説明し、学生達に都市を開発させる。この作業によって学生達は旧街道や商店街が出来るという都市の変遷を学習することにもなるだろう。
この時の都市は初めの状態からやり直しても良いし、今まで開発してきた物を利用させても良い。

6) 都市経営の論理
 SimCityでの大体の都市開発が出来るようになったら、実際の都市経営の論理の概説を説明する。その説明中に作業をさせてもかまわないが、各PC間にあるディスプレイにはその説明となる資料やプレゼンテーションを掲示しておく必要があるだろう。ゲームであるが故に無駄な投資や計画を行ってしまう学生達にあくまでも都市マネジメントの必要性を学ばせることに絞り、都市へ必要な理論の数々を意識化づけ、次回からの専門に特化した講義へと繋げていくことを目的とする。この時日本とアメリカとの市長の仕事、市政の違いについての説明をしておく。

7) 土地利用計画(1)
 SimCityをプレイさせておくとよく見られる工業地区と住宅地区を離す配置の効果的方法と、同心円モデルや扇形モデルのような実際の土地利用のパターンとその背景を説明する。また、都市規模や都市ビジョンに見合う土地利用の方法について説明する。この時、この説明の中で簡単に触れただけのモデルでも講義中であろうとインターネットにそのまま接続し、調べ、学習するようになる学生も現れるだろうが、それを制止する必要はない。また、インターネットを使い遊ぶ学生も出るかもしれないが、毎回都市を保存して提出するという作業の他に都市の現在の状況を画像に保存して提出させることでそれを多少防ぐことも可能であろう。

8) 土地利用計画(2)
 ここではより高度な土地利用を行うために地域制の説明をする必要があるだろう。これは前章に載せた「日米の用途の違い」の例を参考にして、セットバックや斜線規制などSimCityでグラフィック的に再現されているという余談的な物も含ませて説明すると良いだろう。
ここではニューヨークのゾーニング規制を知ることで「なぜ日本とは違うのか」という課題を与える。講義の話の中からその答えを見いだそうとする学生もおれば、SimCityをやりながら感じたことを考慮に入れて解答する学生もおれば、実際にアメリカのゾーニングについて調べる学生など様々であろう。この作業の中で得たものを学生達の中に植え付けさせこの後都市開発を続けていくプロセスの中で答えを見いだすこともあるだろう。また、それについてBBSで討論することもあるだろう。

9) 交通計画(1)
 まず、交通システムと交通問題についての説明をする。そして、前回までの流れを受けて、土地利用と密接に関わる交通発生や都市発展構造の説明をする。こうすることで学生達が思うままに行ってきた無計画な交通網を再整備するきっかけを与えるとともに、その効果的手法の例を挙げる。その中で学生達はSimCityにとって、自分の作った都市にとってどのような交通網がよいのかを考えだし、それを現実と比較しながら効果的な手法を高めていくだろう。ここで得られる配置計画は必ずしも現実に適用できない物も多いが、理論を板書をするだけに終わり、単なる知識となるよりも遙かに大きな経験となるだろう。

10) 交通計画(2)
 前回が道路の配置というものを主眼においたものであったが、この回は公共交通機関についての説明を行う。勿論公共交通機関をどうしても用いたくない、という学生もいるだろうから前回の作業の続きを行わせても良い。公共交通機関の定義と予算の問題、都市規模や用途に合わせた交通機関選択などディスプレイを通じた説明をしていく中で学生は自信が必要と思う理論をSimCityの中に用いるようになるだろう。そして、中途半端な理論の適用がいかに危険であるか、というのも都市交通の仕組みを通じて知ることもあるだろう。そして、このような作業をもっと洗練させたいという意識が3年次から始まる交通計画に繋がっていくこともあるだろう。
また、余談としてアメリカの車社会とその変化について述べておくとSimCityの交通の理解が高まるだろう。

このようにそれぞれの理論の説明をすることで、その理論を用いて学生は自分たちの目の前にある問題だらけの仮想都市を少しずつ変えていこうとするだろう。そのため必ず毎時間毎時間自分の都市を少しずつ成長・変化させていくのである。また、教師はこの時に開発見本のビデオを見せたり、場合によっては優秀な学生の状況を見本にプロジェクターに映しだして、それを喚起させても良い。
この作業の流れは前期一杯続けさせる。また、この時に行う説明というのは前章のような完全なプログラム形式でもよいし、講義的なものでもいいだろう。これは教える目標によっても変えるのが適切であろう。また、疑問点をBBSに書かせて内容を高めるというのはSimCityファンサイトのBBSと美濃学ゼミナールのBBSからその可能性・有用性があると判断したからである。

11) 公共・公益サービス(1)
 主に都市のライフラインとなる電気と水道の説明を行う。電気やガスについては日本では民間事業となる物の、その立地の問題や環境への影響とその需要と供給の理論を知ることを目標とする。水道計画については、SimCityでは水循環や水害などが表現されないために、深く突っ込んだものは出来ないが水源の水質確保、水の需要と供給の問題などには触れることが出来るだろう。こうすることによって、近隣都市との水や電気の取り引きはSimCity内ではこの程度であるが、現実ではどうであるかという社会的な面を押し出したものも効果的な学習体系になるだろう。また、水については3年次に始まる水利用計画について必要性を説明しておくべきである。
 また、先日発生したサンフランシスコの停電の問題などを話の中に入れても良いだろう。

12) 公共・公益サービス(2)
 前回の続きとともに、学校や病院を通じてSimCityはこの点においては少し脆弱なモデルではあるのだが、コミュニティという概念とともに触れておくこともできる。どちらかというとゴミ処理の問題が時代的にも材料的にも適当かもしれないのでその場合は前章のものを改良しても良いだろう。また、SimCityを通じて感じた交番システムや市警と行政強制力、というような日本とアメリカの警察の違いの余談について触れることも出来るだろう。

13) 都市財政
 SimCityを通じて都市の財政確保の問題と、予算配分、債券の使用時期などを現実の問題と絡ませながら説明する。そして、学生達はSimCityにおいて実際の行政と同じように無駄な道路や水道管を配備して、適当でない公共投資の現実とその解法に迫る。借金を抱えた行政を政治悪で終わらせない財政コントロールを知ることで、近寄りがたい実際の自治体の財政面への関与を喚起させることが将来的にもあるかもしれない。

 この時点で前期が終了し、一通りの基礎的な知識を得ることが出来たと思われる。しかし、それを単なる知識として終わらせないためにも、テストとして紙に答えを書かせるのではなく、夏期課題としてマスタープラン通りに都市を作って来るという課題を与え、HTML文書と都市データを夏期休暇後に提出してもらう。その間までに前期の講義の中から得た知識や、自分でSimCityをやっていてぶつかった都市問題について調べたことや、インターネットや書籍などから手に入れた知識などをSimCityに還元して都市をマスタープランに出来るだけ沿うように作ってこさせる。もちろんそれは学生達の自助努力に一存するが、自分の作った都市を目標通りに作ろうとする意識は誰だって持っているだろう。

 シミュレーターである限りその時の限界点、出来なかった点があるかもしれないが、その場合はなぜ出来なかったのか、なぜうまくいかなかったのか、という都市分析をさせてそれをHTML文書に書かせる。マスタープラン通りに作成することは大切ではあるが、それは決していいこととは限らない。都市の理論を知り、都市の未来を創造していくというプロセスを重視するならば逆にそういう点を評価することも必要であろう。


このような活動は自分の住む町に対して将来像や改善点を書かせるレポートのような効果を持つとともに、シミュレーションという活動を利用してその可能性について探るとともにその結果に対しての分析を行えるというシミュレーション独自の教育効果がある。このプロセス学習と将来予測・行動評価はシミュレーション教育の特殊性と言える。また、ゲームであるという要素がその活動力を増大させる。完全なるシミュレーションにはどうしても専門的な知識が必要とされるため、レポート結果を写したり改竄したりするだけで学生達の中でも数少ない人にしか学習効果はないだろう。単純なインターフェース、わかりやすく・変化の追えるグラフィックがこの時に生きてくるのである。また、そのコストも非常に魅力的であり、町のPCショップだけではなく近年ではインターネットを利用したWebショッピングでも安く、簡単に手に入れることが出来るため学生達が自宅で学習活動を行う、もしくは続けていくにはもってこいなのである。


後期
 後期ではSimCityを用いずに都市のその他の理論や都市計画の手法をまず説明し、その後マスタープランをもう一度描かせるようにする。この場合に描くマスタープランはそのままでもこれまでの講義の流れから得た知識を元に作るためにより高度で現実的なものが描かれるかもしれないが、まちづくりを担うようになる人材に必要とされるような理論的で、合意形成の図ることのできるマスタープランと都市運営ビジョンを描かせるために実際のマスタープランの評価を行いながらより現実に近いマスタープランの作成を目指す。また、実際の社会と同じようにある程度開発された都市を用いてマスタープランを描かせることによって、現在の状態から未来を描くというまちづくりには欠かせない作業を行わせる。

 既存の都市を用いるためSimCity独自の作る愉しみは半減するが、学生達が行った行動に対して反応を示すというシミュレーションの特性を活かすことが後期の目標でもあり、実際に実現を図ることがどれだけ難しいか、どのようにプランだてすべきなのかを知ることでより高度な理論の必要性と現実的障壁をゲーム的な中からも感じることが出来るのである。もちろん、シミュレーションはあくまでもシミュレーションであるために限界がある。しかし、SimCityの場合はその限界が多すぎることが幸いしてシミュレーション教育にありがちなシミュレーションで出来たことは出来るであろうという錯覚を引き起こさないだろう。また、その限界についてのフォローは前述したとおりである。

 マスタープランを描かせた後は例によってHTML化し、あたかも実際のマスタープランのような形にまで仕上げながらも「3分で分かる」わかりやすく合意の取れやすいマスタープランを作らせるためにも学生同士によってそれを評価させる。ここで空想的なプランの見直しを図るとともにワークショップのように相互の意見を出し合い、それを高めるディスカッションをグループに分けて行う。この場合、可能かどうかという議論は学生同士の相互学習作用によって新たな発見を生むことさえある。また、わかりやすいイメージ、文章などの高度化も図ることが出来る。そしてここでさらに昇華されたプランを元に都市再開発などを実際に行ってみてそのプロセスと結果をレポートさせることで後期の評価とする。この場合の注意点も前期と同じである。

 また、シミュレーションを行うことで学習してきたものに加えて、SimCityではできない市民参加による都市運営やまちづくりの時代的変化などを講義しておくことも重要であろう。こうすることで各人の頭の中でシミュレーションモデルを構築し、時代の変化に沿って何をすべきかを見いだす手助けになるだろう。これは各人の努力によるところが大きいが、「SimCityというゲームだから出来ないんだ」や「SimCityにはこういった点が必要なんだ」という考えから、一年生で培った人間の心理や社会性、科学の論理を考慮に入れて頭の中でシミュレーションを行い、あらゆる状況に対応できるようになることもあるだろう。そう考えるならば完全なるシミュレーションというものを期待するのではなく、シミュレーションを常にイメージして未来を創造していくことこそが都市シミュレーション学の目指す物なのかもしれない。


 これはあくまでも都市シミュレーション学の一つのモデルであり、完成したものではない。その為、これから研究会Webサイトにてその実証を行うべく、前章のSimCity利用の方法と照らし合わせ、Webを利用した形式でこの活動を行っていく予定である。これは個人個人の作業としての形を想定して作られているが、グループを構成して行うという手法も考えられる。また、都市情報学部の系統を特化させた物や、逆に系統に触れるような形にプログラムを変えることも可能である。

 SimCityは完璧なシミュレーションではない。というよりも完璧なシミュレーションなどないのだ。SimCityも同じように、どうしても人はシミュレーションを現実に近づけていこうとするのだが、それだけに終わらず活かす方法が必要である。なぜなら現実の世界は刻一刻と変化するために完璧にシミュレーションすることなど不可能だからだ。当てはめられた物に対処するだけではなく、あらゆる場合に想定されることに対しても対処できるようにならないといけないというのがまちづくりの難しさではないだろうか。まちづくりにおいて重要なのはプロセスであり、そのプロセスを通じて得た知恵を活かすことこそが目指すべきものなのである。
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