[#006]
 アメリカの都市計画
(02/04/05)
 都市計画や土地利用についてすべてを語るのは無理なのであくまで関係ありそうなもの、これから関わって来るものを中心に説明する。ちょっとマニアック(専門的といわない)で申し訳ないが。


 [#003]でやったようにニューヨークでは1エーカー当たりいくつ、と戸数を決めているところから見てわかるようにエーカー単位の規定があります(もちろん、実際はこんなにすべて四角四角しているわけではないのでタイル単位通りやっているとは思えませんが)。なにもこれは例を挙げたニューヨークだけということではありませんが、アメリカ全土がこうしているとは限らりません。

 なんで統一してないのかと言われても困るのですが、アメリカは日本のように国(アメリカ連邦政府)で都市計画の法律を定めておらず、憲法で規定された基本理念に基づいたものを州法にて規定する、という形になっているからです(さらにその下に色々とあるわけだがここでは省きます)。だからアメリカは州単位でまったく街並みがかわることがあり得ます。
 これは植民地の歴史や連邦制であることを考えれば当然かもしれません。

 日本とアメリカの都市計画を大雑把に分けてみると、こんな感じになります。
日本 アメリカ
計画・法律について ・国土利用計画(国単位の計画)
・土地利用基本計画(都道府県単位)
・都市計画(都市単位)
すべて全国統一
・州法による土地利用計画(まれ)
・ゾーニングとマスタープラン
・市町村など自治体単位による計画と条例
マスタープラン 92年から市町村に義務化
整備・開発または保全の方針
(00年から整備・開発及び保全の方針)
一般的にはある。ゾーニングより上位
都市基本計画、地域総合計画
用途規制 地域地区制(用途地域制) ゾーニング
 色々小難しいものですが、日本のは国→都道府県→市町村というような「トップダウン」方式になっていて、アメリカのは自治体で行うと言うのが基本です。
 だからダメというわけではありませんが、都市を計画するのに都市じゃない所までお伺いを立てる全体主義があるわけですね(そこに利権のカラミがあったりすることもあるわけですが)。
 それじゃイカンって事でマスタープラン登場したとも言えなくないんですね。なんでもそうなのだが発生してきたプロセスが異なれば形が異なるのは必然である。そう、それは都市計画にも言えることである。


 アメリカの都市計画の特徴は「マスタープラン」と「ゾーニング」にあるとされているが、それも自治体主導の表れでもある(自治体については[#009]を参照してもらいたい)。

 「マスタープラン」というのは「都市シミュレーション学講座」でも登場しているように都市計画の総合計画と言うもので、都市の将来像を計画するもので、すべての計画はこれにのっとっていなければならないというモノです。都市計画の全体的指針といってもいいでしょう。
 市民参加を訴える書も多いですが、あまり積極的に市民参加してもらおうという所はないようです。アメリカでは土地利用の憲法ともいえる存在となっています。

 「用途規制」というのは前回説明したように「この土地はこういう用途にしなさいよ〜」というルールであり、住宅地に大規模な工場が建たないようにしていたりするモノです。これがなければ意外と無秩序な開発が進むというよりは、無秩序な開発が起こったからこそ、このようなモノが登場したと言っても過言ではありません。アメリカのゾーニングは日本のよりもはるかに厳しいものです。
 また、土地を様々な用途に分けることは土地の有効活用を促すことができる。港に近い場所に工業地区を作ることなんていい例ではないだろうか?江戸時代だろうと、平安時代だろうと同じである。


 規制というと固そうだが、SimCityで言えばそこに設置or区画するモノを決める事がそれに該当しうる。そう、ここは低密度に、ここは高密度に、ここは埋立地区に、というようにしてしまうことが規制だ。始めからやっているのでわかりにくいのだが、シム人たちが勝手に「ここに俺の家を造ろう」「ここは高層ビルを造ってしまおう」と決めることができない規制が用途規制なのである。
 元々自由に開発したい土地を公が管理することが規制ともいえる。

 これはこれで公共の福祉のためには仕方のない作業なので、みんな受け入れるのである(厳しければ文句言うけど)。ということで、シム人たちは始めからその規制にのっとって開発していると言えるのである。だからちゃんと用途を考えて配置しなければならない責任があるわけですね。


 SimCityでプレイしていてもそういうことが分かるとおり、アメリカでは市町村単位でできることが多いのである(かといってアメリカでもゲームにあることすべてではないが)。日本では法律は全国統一であり、市町村が独自性を出すモノは用途地域制の中の「特別用途地域」というモノを独自にもうけたりマスタープランを造ったりと独自色を出したりしているという違いがある。

 自治体の都市計画であるという点はまた別のレポートを参照してもらいたい。
参考文献:「ゾーニングとマスタープラン」、「アメリカの都市開発」、「現代アメリカ都市計画」、「土地取引・利用・保有の基本方針」、「都市計画 利権の構図を超えて」
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