[#012]
 アメリカの都市計画(2)
(02/05/18)

 アメリカでは都市計画は自治体が独自に行うものなので、アメリカの都市計画というものは存在しない。ニューヨークの都市計画とかサンフランシスコの都市計画などいうしかない。

 しかし、それで終わってもなんなので、一般的というよりもマクロ的に見たアメリカ都市計画をまとめることにしておきます。そして、その中でSimCityの都市計画はどれに該当するか探せばいいのです。いやぁ、なんて名案なんでしょう。

 ・・・・そうすると自治体をみながら「自治体の都市計画」というのを見ておかなければなりません。


 アメリカの自治体は日本とは異なる。[#010]でアメリカの自治体は議会・行政局・委員会によって成り立っていると説明した。ということでまず、自治体と都市計画との関わりの説明をする。


 「議会」はSimCityには存在しないのだが(あったら多分まったくやりたいように出来ないでしょう)、一応説明しておくと、議会は州の授権法を受けて条例を制定してから都市計画できる、というプロセスの中にある。この条例は各種機関の作成した「モデル条例」を参考にするそうだ。
 さらに都市計画の役割としての「議会」は、都市計画の実施体制と制度体系を整えることとされている。後者の制度体系というのは都市計画の基本方針(マスタープラン)を定めること、土地利用規制等の整備のことである。そう、これはSimCityでは市長であるプレイヤーに委ねられている権利である。

 「行政部局」は各種存在し、都市計画の分野に置いては(都市)計画局がある。サンフランシスコなどのように大きな自治体では都市計画プロフェッショナルの局長が計画局の全体を取り仕切る形になっている所もあるが、小さいところでは部局が存在せず事務員一人、というような所もあるそうだ。
 それは[#010]の各都市計画関連の行政局を見ていただいてわかるように、開発局、計画局、都市計画局などの名前こそ違えど同じような部門の局(訳は適当なんですが)がある大都市とは別に、まったくそのような局(Department)が存在しない小さな町もある、ということを表しています(見当たらないだけかも知れませんが)。また、「委員会」が力を持っているところもあります。

 「委員会」は都市計画におけるは、「(都市)計画委員会」「ゾーニング(調整)委員会」が必要とされている。ゾーニングは都市計画と違うのか、と思われる方もおられるだろうが、都市計画とゾーニングの誕生プロセスが違うのでこうなっているようです。もちろん、アメリカの自治体は前にも言ったとおり様々なので、一概には言えませんが。
 計画委員会は都市計画の実施面の政策決定を行う機関で、5〜10人程度の財界人、不動産業者、法律か、建築家、住民運動家などで構成される。自治体によって異なるものの、所により議会であってもそう覆すことが出来ない、という強い姿勢を持った独立した委員会として存在する。
 このような議会や行政局と関係のない委員会が力を持っているのはアメリカと日本では大きく異なる点である。といってもそれが決定権はどちらか、というような議論を生み出したこともあったりする。


 やや蛇足になるが「委員会」はアメリカの「標準都市計画授権法(SPEA)」にて委員会の人選の多くは市長に任されるとなっている。もちろん、議会が任命する人もいる。

 その標準都市計画授権法ってのは・・・なんでしょ。
 えーっと、「標準州ゾーニング授権法(SZEA)」に次いで1928年に商務省長官の任命した諮問委員会発表されたモデル法(各州が法律を作るときに参考にする法律のモデル)で、取り扱っている内容は主にマスタープラン、サブディビジョン(宅地分割)、街路における建設規制、地域計画がある。詳しいことはさておき、あくまでも基本的な都市計画の考え方と思ってもらえばいい。

 このような全国的な州のモデル法は他にもアメリカ法律協会(ALI)の「モデル土地開発法」などと共に各自治体がこれを参照にしながら都市計画条例を策定するようである。
 ・・・ってことはSimCityは一般論的なものだからこれを参考にしているのでは!とか思ったりするが、それでは物足りないような気がする。


 「委員会」が存在し、強固な力を持つというスタイルが存在することは「官僚式都市計画」の日本とは異なる点ですね。もっともそれを変えていこうという、いわゆる「自治体の反乱」というのがあるのが現在の日本ですが、アメリカでも委員会を含めた「あり方」についてもめているようです。もちろん、委員会が存在しないところもあるわけですが。



 今度は都市計画の体系を説明しながら、SimCityのカラミを検証していきましょう。

 アメリカの都市計画の体系を構成する制度は
  1. マスタープラン
  2. ゾーニング(地域制)
  3. サブディビジョン(宅地分割規制)
  4. オフィシャルマッピング(公図制)
  5. カベナント
 の5つだと言われてます。1〜4の制度手法は同一の(自治体の)条例内で規定されることが多いらしいです。そのためまとめちゃえという動きもあるらしいですが、SimCityに直接関係があまりないような感じなので省きます(まとめたのがSimCityと言えるかもしれませんが)。


 さて、それぞれについてSimCityとからませて考えてみましょう。

 「マスタープラン」・・・はちょっと関係ないですかな。ホントは関係あるんですけど、プレイヤーが意図的にどうこうできるものであるかといえば違う、ということで飛ばしちゃいます。
 そういうわけにもいかないので簡単に説明しますが、これは「都市の憲法」と言うやつで、様々な分野の物を調整する包括的な都市構想計画みたいなもんです。だからSimCityで言えばプレイヤーの意志もそうなのですが、ソフトウェア側で固定されている概念なんかもそうとも言えるでしょう。ワケわかんなくてスイマセン。
 一番わかりにくい概念だけど使われやすい概念ですので日本でも「名前は」よく使われますが、アメリカの自治体の力で考えれば基本的なルール−いわゆる「憲法」という存在となっているので、日本のような理想図とはちょっと異なります。

 「ゾーニング」・・・[#006]でも言ったとおり地域の用途分けです。行うのは行政部局だそうです。私権に身近にかかるものですから、色々とゴタゴタするので先程述べた「ゾーニング調整委員会」を設けるところが多いそうです。
 ちなみに日本のゾーニング、用途規制は国の作った法律だから用途分けの種類は全国一律です。

 「サブディビジョン」・・・宅地を分割して、譲渡することや新たな建築物を建てる行為に対する規制。あまりSimCityに関係ない。

 「オフィシャルマッピング」・・・公園、学校などの公共施設や街路などの用地を確保する公図と呼ばれる地図に書かれた公共用地内の建築行為を禁止するもの。SimCityではプレイヤーの公共施設設置の考えがこれに当たる。
 SimCityでは他に開発された(区画された)敷地をブルドーザーで整地して公共施設や道路を建設することもこれに当たるかも知れない。日本ではそうそうできないが、アメリカでは「ポリスパワー」−警察力とは違う、市民生活の共同性を重視した公権力があって、その為に用いられる規制権[#030参照]があるので、こんな事も出来ちゃいます。もっともそれで黙ってる人ばかりではありませんが。
 マスタープランの公共施設はイメージ的な物で、こちらの方が細かいイメージである。

 「カベナント」・・・説明難しい。必要とされないこともあるらしい。


 アメリカの自治体としての構造は(すべてではありませんが大体)このようになっていますが、必ずしもSimCityがそうなっているとは限りません。と言うのも、SimCityは都市の構造をシミュレートしているものの、操作に関して言えば独裁的な市長、として存在するからです。それについては[#011]を参照
参考文献:「ゾーニングとマスタープラン」、「現代の都市法−ドイツ・フランス・イギリス・アメリカ−」、「都市計画−利権の構図を超えて−」 
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