[#020]
 アメリカの公園
(02/09/06)
行政区分 公園担当部局
ロックヒル市 公園・レクリエーション・観光部
シンシナティ市 レクリエーション局
イーストバトンルージュ郡 レクリエーション・公園局
フェニックス市 公園・レクリエーション・図書館部
マイアミデイド郡 公園・レクリエーション部
 日本では都市公園法と自然公園法が全国一律の法律として存在するが、アメリカでは公園計画についても都市計画と同じように州、郡、市、町によって様々である。また、公園を取り扱う部局もそれと同じく所により様々で、扱う内容も観光や図書館を含めたものもあったりするのである。ここで右表にその例を挙げておく。
 

 その為、これといった基準があるわけではないので例を上げて参考にするしかない。ここでは市でなくて申し訳ないのだが、フロリダ州南部、マイアミデイド郡の例を上げる。なぜここを上げるかといえば単にデータが入りやすかったからである。
 で、このマイアミデイド郡はマイアミ市やキーウェストを含む30の自治体と広大な未統合地域を内包しており、エバーグレーズ国立公園(東京都の3倍ぐらいの大きさの湿地帯)も含むため公園の総面積は半端ではない。利用者も多く、年間2500万人が公園プログラム(環境体験やレクリエーション活動)を利用するという。

 そんなマイアミデイド郡の公園は下の表のようになっている。
 
地元利用想定型施設
小規模公園 1エーカー(acre)未満規模で人口過密地域の「庭機能」を果たす。プログラム提供および職員配置はされない
近隣公園 5〜10エーカー規模で住宅地周辺の学校などに併設する。プログラム提供と職員配置はされない
単一利用目的公園 5エーカー程の規模でテニス、ボクシング、シニアセンターなど、単一種目の個別利用を前提に設置。運営は利用者サイドの非営利団体による。
コミュニティ公園 20〜100エーカー規模で郡全体からの利用を想定する。多目的球技場、複合スポーツコート、大規模スイミングプールに加えて大規模イベント開催機能を果たす。職員が多数は位置され、多種多様なプログラム提供がなされる
広域利用想定型施設
都市公園 自然資源ベースとする200エーカー規模以上で環境保護上も重要な機能を果たす。海水浴場、マリーナ、自然遊歩道、ハイキングコースなどの広範な野外レクリエーション機会を、郡住民および旅行者へ提供する。自然資源保護に対する配慮と意識高揚を促進する
自然保護区 自然環境保護を優先する5エーカー規模以上の区域。学校の環境教育プログラムや自然保護生態系研究などのごく限られた利用に制限されている
特別活動区域 特定の単一利用施設で動物園、鹿棲息区などに代表される。特徴あるプログラムと自然保護施策を前提に、広く郡からの訪問や利用を想定する
緑地帯 自転車トレイル、一般道路、カヌートレイル、乗馬コースなどの形態をとりながら他の公園・レクリエーション施設との連絡路となる。また、野生動物保護、水資源浄化などの機能も兼ねている
「アメリカの公園・レクリエーション行政」より
 
 この表を見ていてわかるのだが、1エーカーの小規模公園がSimCityの小公園に相当し、5〜10エーカーの近隣公園が大公園(9エーカー)にぴったり相当することがわかる。単一利用目的公園が運動場に相当するように思えるが、日本語版では「運動場」でも英語は「Playground」と書いてあり、プレイグラウンドという遊び場公園のことを示していることがわかります。その為、運動場的な利用をする単一利用目的公園は合わない気がします。

 他の所は他の所で異なるのだが、基本的には小規模公園(児童公園、プレイロット)、近隣公園をもっているのが基本で、公園っぽくない公園、プレイグラウンドがあるという形が一般的のようです。池については残念ながらよくわかりませんでした。
 ちなみに日本の公園についてはこちらをご覧下さい。


 公園にエーカーという単位がよく使われるが、アメリカの公園の面積は普通、エーカーで表示され、例えばニューヨークの公園などは名前と面積が書かれたボードが建っている(下の写真)。[#002]でも話したがSimCity3000に登場する「公園の総面積」は、動物園やマリーナ、間欠泉公園、カントリークラブを除く公園の総タイル数(総エーカー)である。英語のAcres Systemwide をなぜか平方メートルと翻訳したようである。これではせっかくのシミュレーション性が台無しのような気もする。
  

SimCityで「運動場」のプレイグラウンド

普通の公園でも3タイルのもある
 
 
 話は変わるが、こんな話を聞いたことがあるだろうか。
 欧米の「1人当たりの公園面積」は日本とは比べものにならないぐらい大きい、と。

 それは確かにそうである。実際、各国の主要都市と比べると半分ぐらい小さいことがわかる。
 (参考⇒国土交通省 都市・地域整備局「都市公園の整備状況」)

 それぐらい欧米に比べて公園整備が進んでいると言われています。いや、進んでいるという表現よりも、欧米の文化では都市に「公園」というものは生活に必要なものだから多いのです。そんなアメリカの話ですが、都市に対する公園の面積をアメリカ都市計画職員協会が市域の10%、一人当たり約50m2(1000人の住民につき10エーカー)の公園面積を確保するよう、勧告しているとのことだ(だからといって守られているかどうかは不明だが)。ちなみに日本では10m2


 こう書くと、いかにも日本が他の先進国に遅れているようにも見えますが、そういう基準で語ることは必ずしも正しくありません。というのも公園は必要だから作るのであって、必要のないところに作るのはそれこそ無駄な公共事業です。元来、日本の文化に杜(もり)や庭園はあっても公園はありません。いくら日常生活が西洋化されてきたとはいえ、物の考え方、近所のつきあい方、余暇の考え方が根本的に違うのに比べてしまえるのか微妙なところです(でも少ない所は明らかに少ないだろうけど)。
 だから日本では欧米と比べれば整備が遅れているのも確かといえばそうですが、ニーズが違うことも大きく影響していると言えます。SimCityをやりながら「公園はたくさんあった方がいい」と大量に配置していませんか?


 公園に対する考え方が大きく違うから公園の使い方も違う。
 アメリカでは公園といえばレクリエーションという言葉が出てくるし、行政にもレクリエーションを対象とした部局が存在する(一番最初参照)。日本では遠足の時ぐらいしか使われないことが多いが、「レクリエーションとは、単に活動の種目をいうのではなく、地域社会の中で住民のための公的サービスの一環として公園・レクリエーション行政が展開されている*)」のである(日本でも一応してますが)。レクリエーションは単なる「遊び」ではなく生活するのに必要な活動の一つだと認識されるようになっているのである。余暇の文化も異なるので日本人にやれといってみんなやるとは限らない。
 また、そこでは植民地時代の自然破壊による反省から来ている環境教育を行う活動や、非行防止や障害者への医療的レクリエーションも行われている。また近年の観光化を意識したツーリズム運動も増えている。日本でも同じような動きは少しずつ広がっている。
 
 
世界一有名な公園
 アメリカの都市公園といえばニューヨークのセントラルパークが有名である。おそらく世界一有名な公園といって差し支えないだろう。
 これも建設まで色々あったのだが、簡単にいってしまうと「レクリエーションの場がない大都市はいかん」ということでマンハッタン島の中央から北にかけて南北4km、東西0.8km、面積843エーカー(SimCityの29×29タイル分に相当)という巨大な公園である。セントラルパークがなければでNYは大したことのない都市になっていたであろうと言う人もいる。
 セントラルパークはセントラルパークでもフロリダ州オーランドのセントラルパークは4200エーカー(65×65タイルに相当!)とそれ以上に巨大である。

これで半分ぐらいの面積

芝生広場でくつろぐ人も多い
 余談だが、日本の公園制度というのは明治時代前後にセントラルパークを見た人たちが感動して確立したとされている。
 

*)「アメリカの公園・レクリエーション行政」江橋 慎四郎による序文より
参考文献:「都市計画概論」、「都市緑地の計画と設計」、「都市緑化計画論」
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