[#034]
 SimCityと電気
(03/05/15)
 都市を支えるエネルギーは電力である。

 現代社会では電気抜きには語れない世の中になった。こうやってインターネットが出来るのも電力があるからである。現代生活に欠かせないものとなった電気は、SimCityでも欠かすことはできない存在であり、シリーズを通して「電気」の要素が(ほぼ変わらず)存在する。

 SimCityでは電気は都市を支えるエネルギーというのが根本のゲームシステムのため、電気がないと都市が発展しないというのを再現されている。電気の供給がなければ建物は廃墟になり、発電所の能力が落ちれば停電が頻発し、住民から怒りの声が集中したりする。また、SimCityでは(2000と3000で)発電施設の老朽化による発電効率の低下というのも再現されている。ずーっと建てっぱなしにはいかないというのもリアリティの追求の結果であろう(ずいぶんシンプルだが)。

 SimCityの電気の仕組みは大体以下のようになる。

発電所→(送電線)→建物

 このように変電所の施設等もないずいぶんシンプルな構造となっており、電力の供給がない地区は開発されず、電力の供給が途中で止まっても建物が廃棄されたりするように電力がないと都市そのものが動かない仕組み。実際には変電所がないというのは考えられないが、

発電所→変電所→送電線→変電所→建物

 このような形で本当なら送電線の間に変電所が存在するべきである。はじめの変電所は、発電所からの電気の電圧を上げ送電線で送るものであり、発電所に併設もしくは近くに設置される(電圧を上げるのは、そうした方が電気を大量かつ安定的に送れるから)。送電線から送られてきた電気は高電圧すぎるために、変電所で電圧を順次下げます。さらにいくつかの変電所を通しながら(途中大電力を必要とする大工場や高層ビルに電気を送るが)配電用変電所、柱上変圧器を通して一般家庭等に送られる。

 SimCityでは変電所と言う要素がないのはその複雑な工程をすべて無視しないと大変なこと(めんどくさい)になるから削除されているのだと思われる。本当はこの時点で電力に関する要素が「必要なもの(電力)」「やっかいなもの(汚染・NIMBY)」という基準において判断されるものでしかなくなっており、資源や雇用、治水等の要素がないことが完全に証明される。



 各シリーズにおける送電方法が若干異なる事は、おそらくゲーム性を考慮して変更されているのでたいした問題ではないのだがひとまず簡単にまとめておくことにしよう。
 
発電所 送電線
SimCity
classic
火力、原子力の2種類。公害はあるが危険の少ない火力か、メルトダウンの可能性があるが効率の良い原子力かという悩みを与えた。発電量はブロック数(供給世帯)という概念で再現
地区と地区(or建物)との間に配置する。交差点を除く道路・線路の上にもそのまま配置可能。海底ケーブルも可。電線のようなイメージ。当然だが、電力が行かない地区・建物は機能しない
SimCity
2000
火力が石炭・石油・ガスに分けられ、原子力・水力・風力・ソーラーと未来のエネルギー源として期待されるマイクロ波と核融合発電を追加(9種)。発電量にMW(メガワット)の概念を導入。
SimCity classicと似たようなものだが、地区と地区をつなぐだけでは電線に近いところからしか発展が始まらない為、区画を通す必要がある。水を横切るときは高架線に変更。
SimCity
3000
sc2kとほぼ変わらないが、水力発電が消える。ゴミ処理のエネルギー焼却炉が若干の発電機能を持つ為、9種。マイクロ波照準ミスによる火災、風力やソーラーの不安定さの要素がなくなる
これまでと異なり、何もなくても電力の供給がある建物の5タイル以内なら電力が通る。送電鉄塔となり、遠い所への電力供給の時に使う。道路タイルを横切れるが、そこにはおけない。
SimCity 4 sc3kとほぼ変わらないが、マイクロ波が消えた模様。計8種。どうやったら建てられるかの目安が具体的に表示されるようになった。 sc3kと同じ。デザインが赤白の鉄塔になったぐらいかな?あと、鉄塔間の距離が変わった程度。
 
 これがSimCityにおける電力システムの概要だが、基本は上述のように変わっていない。そんな中、大きな変更点があったとすれば、発電所の種類増減と送電線のタイプ変更が上げられるだろう。発電所と送電線の変化について考察していこう。


[発電所について]
 数が増えたことはハードウェアの進化によるところが非常に大きいと思われるが、SimCity 2000(以下sc2k)ではあった水力が消えたことに関する考察は[#033]を参照としてもらうことにして、その要因の一つは時代の変化に伴う風力やソーラーといった「クリーンエネルギー」の実用化に併せたことも大きいだろう。また、要因の二つ目として、まだ実用化されていないマイクロ波と核融合発電が導入されたというのは、sc2k以降から導入された年を追うごとに技術の進歩やらの要素があり建てられる建物が変わるシステムの導入の影響があげられる。とはいえ時代を追うごとに発電効率が変わるとかなんてことはもちろんない

 どの発電所にも言えることだが、資源が存在しなくても発電するどころか、交通手段がなくても水が供給されなくても機能する(現実にはほとんどの発電所で膨大な水がいります)事を考えれば、実際の発電所のイメージと異なりまるで電池のような発電施設であることがわかる。確かにウランとか石油とかの話が絡み出すと話が大きくなってプレイしづらいと言うのもあるでしょうが、これも「都市の機能」として見ているということからこのような扱いになったのかもしれない。ただし電源開発と都市(と言うか農村)問題を切り離してしまった感がある。プレイに慣れてくるとボンボン建ててしまいがち(特に核融合の登場以降そうなりやすい)。
 各発電所とも、タイプが様々あるのだが(原発ならBWR、PWR、etc.)一種類にまとめられており、変化もしない。発電所についてはそれぞれ別の機会に説明することになる。



[送電線について]
SimCity 3000 SimCity 4
 送電線はゲーム性によるところが大きいようだ(sc2kは不便だった)。classicでは地区が3×3のブロックという概念だったから、ブロックとブロックの間にスペースがあるときに電線をつなぐ方法(隣り合わせて地区を配置するならば必要ないが)と言うのが主な利用方法だったが、sc3k以降 sc2kでのめんどくさい電線配置(地区の上を引っ張らないとあまり効果的ではない)はやめて、近いところは自動的に送電し、遠いところだけ「送電鉄塔」となった送電線を使うという仕組みになった。SimCity4(Sim4)でも採用されたので、これで落ち着いたものと思われる(これ以降出るかは知らないが)。
 送電線を繋げなくても電気が伝わるのは、見えない電信柱か地下送電になっている可能性がある。アメリカには電線を地下に通すのが一般的であることを考えれば、地下導線がこの範囲だよ、ということかもしれない。

 この送電鉄塔はsc3kとSim4はデザインが異なるものの、使い方は同じである。鉄塔間の距離がsc3k=3タイル、Sim4=9タイルとずいぶん違うが、鉄塔間の距離は約数百メートルと言われているので、両者ともその範囲内に収まるためたいした問題ではないと思われる。
 ただ、送電鉄塔というものは(電信柱もそうだが)構造上、電線が3本単位(三相交流という)でないといけない。とはいえ、3の倍数というわけではなく、高圧送電鉄塔の例を挙げれば、いちばん上に架空地線2本、電力線が3本ずつ左右に分かれて6本の計8本のものもある。SimCity 3000以降の送電線は4本しかないというのはどうもデフォルメ化しているようだ。

 電線がたるんでいないので切れるのではないか、と言うツッコミはさておきましょう(笑)。



 他にもSimCityにはない要素があります。それは資源や雇用、治水等の前述したものの他に、一日の時間変化、季節・気候の影響などが挙げられるが、これは実際のアメリカの電力事情を絡めながら[#035]にて検証していくことにしよう。


※三相交流・・・電線3本は電圧、電流、周波数は同じだが時間にズレを生じさせて、電気を送る方式。

参考文献:「ウィル・ライトが明かすシムシティーのすべて」、「シムシティ3000 公式戦略ガイド」、「Macintosh版 SIMCITY 都市づくりパーフェクトマニュアル」、「シムシティ2000公式ガイドブック」「とことんわかる エネルギーのしくみ」「図解 電力システム工学 −電気をつくる・送る・ためる!−」

参考Webサイト:
 中部電力
 
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