[#036]
 火力発電所
(03/11/15)
 SimCityでも現実でも、火力発電所というのは非常に重要な発電施設である。

 特に、火力発電所は稼働させたり止めたりするのが原子力発電所よりも楽に出来る大出力発電施設というのが最大の特徴で、そのため、原子力発電でベース電力(基本となる電力)をまかない、昼間などに電力がより必要となったとき([#035]の電気使用量のグラフ参照)に火力発電量を上げる、という使い方をしているのが一般的のようだ(水力も同様)。

 下の表がそれを端的にまとめたものである。
水力発電 火力発電 原子力発電
起動時間
(0〜定格
100%運転)
2〜3分 2〜3時間 5〜6日
特徴 起動停止が数分でできるので、その日の負荷に追従した運転が可能 起動停止が数時間でできるので、その日の発電計画に合わせた運転が可能(DSS運転) 起動停止に時間がかかるので、一定出力運転が基本(ベース負担運転)
用途 あまり大容量の水力発電所はつくれないので、ピーク負荷調節用 起動特性がよいので、日負荷変動分のピーク負荷用 起動停止に時間がかかり大容量に適しているのでベース負荷用として基本的に一定出力運転をする
「図説電力システム工学」各種発電方式の特徴より
  
 
 火力発電所というのは説明するまでもなく、燃料を燃焼し、水を水蒸気に変えてその水蒸気にてタービンを回すという燃焼エネルギーを電気エネルギーに変換する発電施設だ。一般的に火力発電と言えば、石炭・石油・天然ガス発電を思い浮かべるが、他にディーゼルや内燃力機関、地熱発電も火力発電に分類されるが、SimCityには登場しないのでここでは説明を省かせてもらおう。


 SimCityではSimCity classicの頃から火力発電所が登場するが、[#034]でも紹介したようにSimCity classicは一種類の火力発電所しか登場しない。グラフィックを見る限りでは、石油タンクが見あたらないことから、どうも石炭発電所なのではないか?とも思え、アメリカの火力発電所と言えば大半(発電量全体の50%超)が石炭火力発電所なので石炭発電所だと思われる。
 SimCity classic LIVE!のページにも石炭火力と書いてあるので間違いないだろう。


 SimCity 2000以降は、石炭・石油・ガスの三種類の火力発電所が登場するのだが、それらの登場年次・条件には若干の違いがある(SimCity classicはゲーム開始時から)。グラフィックからは大したことはわからないが、ハードウェアの進歩、リアリティー追求、環境汚染の大衆化に伴い、選択に幅を持たせるために個性が微妙に違う3種類に分けられたと思われる(石油発電はアメリカではあまり一般的ではないが)

 特に都市には石炭なのかガスなのかというのは大きな違いだ。それは周知のように、火力発電は汚染などのネガティブな要素が大きい施設だからである。大気汚染、CO2排出の問題を考慮して天然ガス発電所が増えているという事実も、SimCityに反映されたのだろう。
石炭発電所 石油発電所 ガス発電所
SimCity
2000
発電出力:200MW/日 発電出力:220MW/日 発電出力:50MW/日
1900年(ゲーム開始時)から建設可能 1955年から建設可能
SimCity
3000
発電出力:6,000MW/月 発電出力:7,000MW/月 発電出力:4,500MW/月
1900年(ゲーム開始時)から建設可能 1950年から建設可能
SimCity 4
発電出力:6,000MW/月 発電出力:7,000MW/月 発電出力:3,000MW/月
ゲーム開始時から建設可能


 では、それぞれの要素から見た実際の状況と比べていこう。

【建設可能年】
 シリーズによってばらつきがあるが、建設可能となる年は大した開きがない。
 実際の火力発電所の登場年は、1881年にエジソンがニューヨークに石炭火力発電所をつくったところから火力発電の歴史は始まっている。日本でも1887年に石炭火力発電発電所が営業開始した。
 ガス発電所は、海外のデータが見あたらないが、国内では1957年に北海道電力、豊富発電所(2MW)が完成して、という話がある。石油は見つけられなかった。
 こう見れば、登場年は適正と言えるだろう。ただ、技術発達による発電容量アップなどは組みこまれていない。もちろん、こんな変化があったらSimCityなどやりづらくてかなわないのだが、現実にはそれと向き合うことが当たり前のごとく要求される。限りある資源であると言われているものだから尚更その傾向が強いと言えるだろう。


【発電能力】
 発電量に関していえば、ガス発電を除き(sc2kのガス発電は少なすぎるような・・・)、ほとんどかわっていない。このことからも、実際の発電所の出力などは別にしてある程度適正な数値に設定してあるのだろうと推測される。
 発電量の変化のなさの例を石炭で示すと、sc2kだと一日当たり200MW/月、sc3kだと一ヶ月当たりになり6,000MW/月と表示が変わるわけだが、200×30(日)=6,000となるため、変わっていないことがわかる。

 ただ、発電量として考えた場合、おかしな数字となる。
 というのも、月当たりどれぐらいの電力を供給するのか、という単位は量の単位である「MWh」を使わないとおかしいからだ。と言うのも、MW(メガワット=1000kW※1)というのは「発電出力」─すなわちどれぐらいの電気を発電できるか、という数字─であり、実際に月にどれぐらいかの電力として使う「量」は「電力量」という単位(MWh、hは時間)と言う形になるからだ。

 そこで、ひょっとしてと思い英語版でインストールした場合、例えば石炭なら6,000MW-h/Monthと表示されるのがわかった。これは、一ヶ月で6,000MWhの電力を供給していることである。
 これにより、SimCityの発電所に書かれている表示は、最大発電出力ではなく、月にどれぐらいの電力を供給できるかを示した月最大発電量であることが証明されることになる。


 では実際の発電所は月にどのぐらいの電力量を供給しているのだろうか?
 国内のデータだが、中部電力新清水火力発電所は一機のみの石油発電所で、認可最大出力156MW、1995年度の発電量249,000MWhということで、月換算すれば20750MWh/月・・・・とSimCityと比べるとエライ数字がはじき出される。しかも、利用率がたったの18.2%で、である。最初の方の表で説明したように、特に火力発電所は、年がら年中フル出力(すなわち利用率100%)で発電するわけではないのだから利用率が低いのは当然なのだが、その低い利用率での数値と比べてさえ、SimCityのものと数字が合わないというのはどういうことか?これはどちらかがおかしいとしか思えない(日本の発電所がもの凄く優れているとかそんなことはないわけだし)。

 となると、考えられるのは、SimCityの発電所は限界まで使わないからか、もしくは計算ミスか、はたまたSimCity側の表示ミスか、ということになる。SimCity2000や3000の発電所は発電量を超える電力を発電し続けると爆発することから見ても、限界まで使わないと言うことはないだろう。ではあと二つの可能性を検討するしかない。
 このおかげで半年も更新を遅れてしまったわけだが(言い訳です)、何度計算しても何で計算しても、SimCityに表示されるような数字をはじき出すためには、先ほど挙げた新清水火力発電所なら 156MW×30日=4680MW/月 と言った具合に、発電量×日数(sc2kなら1日、sc3kなら30日)が最もマッチする計算式になってしまうのである。かなり強引だが、どの発電所で計算してみても、SimCityに表記される数字はこの計算が最も適当なのである。


 そうなると、日本語版がMW/月で表示されていることを考えても、「MW-h/monthと表示される英語版のSimCity側の表記ミス」という仮説が出てくる。オリジナルは英語版なのに、である。
 しかし、そう考えるとそもそも「発電量」とはSimCityでどうやって扱われているのかが問題になるだろう。なぜなら、SimCityでは、それぞれの建物が規模などに応じていくらかの電力を必要とするようになっていて※2、それに見合うだけの発電所が必要、ということになるシステムになっているからであり、それを数値化したのが発電量だからである。また、わざわざ「月」という言葉が用いられているように、月でその量が変化するならば、もうシステムがわからない限り理解することが不可能そうです。
 むしろ、なぜ表示するステータスを、「現在の使用量」じゃなくてと「利用率」にしてくれなかったのかとさえ思います。こうすれば、どれだけの建物がどれだけの電力を必要とするかわかるのに、それを一まとめにして、さらに日とか月とか書くからわかりづらくなってしまった・・・・まぁここにきっと鍵が隠されているのでしょうが、これ以上時間を割いていられません。とにかく今後はこの、「SimCity側の表記ミス仮説」を使っていくことになるでしょう。

 よく考えてみれば、SimCityの時間単位の最小は1日なのですから、時間表記を必要としないから、単純にhの数字をを省いた・・・とも考えられますが、それなら表記しないでほしいところですね。とにかく、どなたかわかる方教えて下さい(汗)。


 汚染の影響とかといった点はまた別の機会に検証することにします。


※1・・・1MW=1,000,000W。日本ではMW(メガワット)を使わずに、一桁増やして万kwで表記することが一般的。そのため、比較にちょっと困る。もっと多い単位はGW(ギガワット)。パソコンと同じである。
※2・・・SimCity 3000の建物ごとの要求電力量は「シムシティー4も楽しむページ」に詳しく載っています。
参考文献:「アメリカの電力自由化 −クリーン・エネルギーの将来−」「エネルギー2002」「火力発電総論」「図解 電力システム工学 −電気をつくる・送る・ためる!−」「世界の電力ビッグバン −21世紀の電力産業を展望する−」
とことんわかる エネルギーのしくみ」「海外の電力事業」

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